【ジオメトリ表の穿った読み解き方】

●『体に合ったものに乗る』
ってのがロードバイクの原則としてありますが、気にする人は気にするし、気にしない人は見もしないのがジオメトリ表(笑)。フレームの性格を決定するものだから、カーボンやアルミといった素材吟味と合わせてこの際ですから考えられてみては?
ヘッドチューブ
 数字が大きくなれば垂直に近くなりハンドリングがクイックに、小さくなれば直進安定性が増します。一般的には72〜74゚辺り。フレームの性格を決定付ける主要因だと思ってます。公表してないメーカーもあります。
シートチューブ角(シートチューブ後退幅関与)
 数字が大きくなれば垂直に近くなり前乗りに、小さくなれば後ろ乗りになります。一般的にはこれも72〜74゚辺り。サドルの前後セットで、ある程度は調整し易い数値でもあります。トライアスロンバイクでは前乗り前提で78゚以上のものもあります(Ceepoとか)が、ロードのTTバイクでは最近のモデルは74゚辺りと通常のロードとあまり変わりないのが一般的になってます。
トップチューブ長&シートチューブ
 先ずはコレ見てフレームサイズを選んで下さい。サイズに依ってどちらも相対的に変わりますが、各メーカー毎の傾向があります(後述します)。
ヘッドチューブ
 長ければアップライト、短ければレーシーなポジションをとりやすくなります。コラム長である程度の調整できますので、レースを視野に入れるなら短い方が選択肢が広がります。
・フロントセンター
 短くなればハンドリングがクイックになり、長くなれば直進安定性が増します。ヘッド角が大きく関与してきます。
・リアセンター
 短くなれば加速しやすくなり、長くなれば直進安定性が増す。と、言われていますが納まるべきホイールの大きさが決まってますのでフレーム毎に差のつきにくい数値でもあり、非常に実感し難い部分でもあります。
・フォークオフセット(トレイル)
 ヘッドチューブに対してフロントハブがどれだけ前に出ているかの値。小さくなればハンドリングがクイックになり、大きくなれば直進安定性が増します。
・ハンガー下がり(BBハイト・最低地上高)
 数字が小さければ安定性が増すと同時にコーナリングでペダルが地面に接触する可能性が高くなり、大きければその逆です。

H(仮想シートチューブ長)・H'(実寸シートチューブ長)・SL(スローピング落差)・L(仮想トップチューブ長)・I(シートチューブ後退幅)・^S(シートチューブ角)・^D(ヘッドチューブ角)・AV(フロントセンター)・AR(リアセンター)・C(フォークオフセット)・HP(仮想最低地上高)・Ch(トレイル)・D(ヘッドチューブ長)・PT(付属ステム長)


●『各社の傾向と対策』
同サイズで別メーカーのフレームを比べた場合、その会社の傾向というか考え方が如実に出てきます。
例えばコルナゴピナレロを比べた場合、フロントセンターはコルナゴ長め、リアセンターは両者共に長めです(コルナゴは伝統的に長めの傾向)。
各メーカー毎にカラーがあり、考え方がありますので、上に書いた基本を押さえてそれを数字から推測するのも楽しいですよ。
試しに各メーカーのフラッグシップを比較してみました。サイズは私のサイズでトップチューブで530〜535mmくらいで合わせて見ました。
『VXR』はTIMEーVXRS、『RXR』はTIMEーRXR ULTEAM、『CLN』はコルナゴ-EPS、『PNR』はピナレロ-プリンスカーボン、『DRS』はデローザ-KING3、『GNT』はジャイアント-TCRアドバンスドSL、『SPC』はスペシャライズド-ターマックSL2、『TRK』はトレック-マドン6.9SLのジオメトリです。
VXR RXR CLN PNR DRS GNT SPC TRK  
510 510 520 515 ---- ---- 525 520 H(仮想シート長)
470 450 480 515 ---- 465 ---- ---- H'(実寸シート長)
40  60  40  00  ---- ---- ---- ---- SL(スローピング)
530 535 530 535 535 535 530 530 L(仮想トップ長)
141 145 121 145 ---- ---- ---- ---- I(シート後退幅)
74  73.5 74.5 73.7 74.3 73.5 74.5 74.7 ^S(シート角)
72  71.5 ---- 72  ---- 72  70.75 72.8 ^D(ヘッド角)
576 583 584 577.5 578 ---- 599 ---- AV(フロントセンター)
400 399 402 406  403 405 440 409 AR(リアセンター)
43  45  ---- 43  ---- ---- 51  45  C(オフセット)
270 270 ---- 265 267 ---- ---- 264 HP(最低地上高)
64  65  ---- ---- ---- ---- 68  57  Ch(トレイル)
121 133 125 130 135 125 125 110 D(ヘッド長)
『----』は記載なし


比べて見て、この中で一番特異なのはスペシャですね。明らかに他より寝ているヘッド角と、それに寄る飛び抜けたフロントセンター。リアセンターもここだけ桁が違います。恐らく直進安定性が飛び抜けて良い代わりに振り回し難い仕様になってますね。
逆にTIMEーVXRS系は相対的にかなりクイック仕様になっていると言えますね。ヘッド角は割合に立っているし、リアセンターも詰まっています。
コルナゴは伝統的にホイールベース長いと上で書きましたが、その通りになっています。TIMEーRXR ULTEAMはフロント長めでコルナゴ風味、リアは詰めるだけ詰めて短くレスポンス重視設計ですね。
ピナレロは思っていたより平均的。ただ、リアセンター長めです。デローザはまるでベンチマークのように全てが平均。ヘッドが少し長いくらいかな?
ジャイアントは昔に比べてスローピングも緩くなってジオメトリも平均化してきました。ただ、記載されてないのが多すぎて不親切です。
トレックはヘッドかなり立てて短め、リアセンター長め、ハンガー下がり低め、とこちらもスペシャ同様に我が道を行ってます。
やはり欧州車と米国資産車は基本設計からして違うって事がジオメトリからもよくわかります。


●『穿った読み解き方』
ここからはちょっと意地悪な考え方をしていきます。同メーカー同フレームの違うサイズのジオメトリ表を見比べて下さい。
例えばオフセット値。これが同じ値だとそのフレームは大きなサイズから小さなサイズまでフォークは1種類だという事。最近はワンサイズのフォークで済ますメーカーが増えました。逆に言うと手間もコストもかかるけど、複数のフォークを用意しているメーカーは『体に合ったものに乗る』という大原則に沿っていると言えますね。
次にヘッド角。実はサーベロなんかは最小サイズから最大サイズまで同じ73゚なんです。身長165cmの人から190cmの人までカバーするには無理があるんじゃね?と思いますが。平均適正サイズなら問題ないのでしょうが、メーカーの考え方立場としてはどーなのよ? と思ってしまいます。
他にも同メーカー異サイズのジオメトリ表を見比べて見て、いやに同じ数字が並んでたりするとあまり良い印象は持ちませんね。その部分は共有化出来てコストかからなくなりますから、一概には悪いとは言えませんが。
逆にやたらと細かくてサイズ展開が豊富なメーカーは好印象です。わざわざホリゾンタルとスローピングで同モデル同サイズを用意しているデローザを筆頭に、440mmから595mmまで同モデルで10サイズ展開なピナレロ、女性用に別ブランド作るオルベアやルック、サイズ毎にやたらと細かく変えて来ているタイムやアンカー、フルオーダー対応なシファックやカレラが好印象ですね。意外にもトレックなんかもサイズ細かいんですよ。
逆に以上の観点から前述のヘッド角全て一緒なサーベロや、サイズ展開たった3種類なリドレーやジャイアントはあんまりかなぁって思ってます。サイズちょうどならいいんですけどね。
以上、私見をつらつらと書きましたが、ジオメトリ表から推察するフレームの性格とメーカーの企業理念に対する考察を終わります(笑)